ゲームクリエイターの世界を小中学生が体験!「くるさと」職業探究イベントレポート

Report
2025.04.07

「くるさと」は、大島の小中学生に様々な職業を知ってもらい、子どもたちの未来の可能性を広げるための職業探究プログラムです。2025年3月2日には、25年以上ゲームエンジニアとして活躍し、開発スタジオの責任者のご経験もある小保田さんを講師にお招きし、「プロとゲームの世界観を考えてみよう」をテーマにしたワークショップを開催しました。

プロから学ぶゲーム制作の心

ゲーム制作にあたり、小保田さんがまず参加者に伝えたのは、柔軟な発想の大切さです。「こんなゲームができたら楽しいだろうな」、「こんな世界に行ってみたい」といったワクワク感を大切にしながら、自由に考えることの重要性を強調されました。そして、前向きな姿勢が制作現場の雰囲気を盛り上げ、より独創的かつ創造的なアイデアが生まれやすくなる。とお話しながら、チームで制作することの多い制作現場において、チームワークの大切さについても教えてくださいました。

また、自身のアイデアをメンバー間でしっかり共有することで、それぞれのアイデアを組み合わせたり発展させたりすることにつながる。チームで取り組むことで、アイデアが魅力的にブラッシュアップされていくと説明し、一人では思いつかなかった発想が生まれてくる醍醐味を味わいながら、共同作業を楽しむ。そんな前向きな姿勢こそがゲーム制作において大切なポイントになると教えてくれました。

ゲーム制作の舞台裏

子どもたちが日常的に楽しんでいるゲームですが、その制作プロセスについては意外と知られていないのではないでしょうか。小保田さんは「どんなゲームも、まずは想像するところからはじまる」とお話されました。ゲーム開発において、その世界を構成する舞台設定は大切なポイントです。舞台を取り巻く文化や歴史について想像を膨らませながらイメージしつつ、具体的な世界観を段階的に構築していくためのポイントを教えてくれました。

しっかりとした舞台を用意することで、その世界を生きるキャラクターが生まれてくる。そして、キャラクター同士の関わりから物語が形成されていく。そんな段階を経ながら時間と労力をかけてゲームが作られていく現場の流れを小保田さんは丁寧に説明してくれました。

今回のワークショップにおいても肝となる舞台設定をじっくり考えていくところから体験して欲しかったのですが、時間の制約から、あらかじめ用意された独特な世界や情景が描かれたコンセプトアート(絵)を題材にゲーム制作のプロセスを体験しました。

創造力を形にするグループワーク

ワークは参加者が各グループに分かれ、好きなコンセプトアートを選び、じっくり観察することから始まりました。アートに描かれた登場人物、生き物、風景などをじっくり眺めながら、設定すべき(もしくは設定したい)世界観をイメージ・構築していきます。そこから、ゲームに盛り込みたい設定を付箋に書き出しながらメンバー間で共有していきました。

ちなみに、設定する際に押さえておくべき主なポイントは下記のとおり

  • どんな世界?(特徴、年代、場所、貨幣、地図など)
  • キャラクターは?(主人公、仲間、生き物、キャラクター同士の関係など)
  • その世界での困りごとは?(プレイヤーが達成すべき目標)
  • どんな場面?(場面のイメージ)

特に「困りごと」の設定がゲーム制作の核心部分であると小保田さんは強調しました。困りごとがあるからこそ、達成すべき目的が生まれ、物語が展開していくからです。

チームで創る喜びを学ぶ

グループワークを進めるにあたり、小保田さんからは共同制作における心構えについても貴重なアドバイスがありました。

  • 相手の話をしっかり聞き、全員が意見を出しやすい環境(場)づくりを意識すること
  • 良いアイデアには「いいね!」、わからないことがあれば「もっと教えて!」と率直に伝えること

これらのポイントを意識しながら、選んだコンセプトアートからイメージしてきた設定を組み合わせつつストーリーを作り上げていきました。物語の展開、舞台設定、キャラクターなど、さまざまな要素を整理しながら全体の物語を構築する作業を通じて、参加者たちはゲーム制作の奥深さと共同作業の楽しさを体験していきました。

創造の結晶!グループ発表会で広がる壮大な世界

ワークショップの集大成として、各グループでコンセプトアートから創り上げてきた物語や舞台設定についての発表会が行われました。3つのグループがそれぞれ選んだコンセプトアートをベースに、独自の世界観とストーリーを披露していきました。発表を通じて広がる子どもたちの豊かな想像力に会場にいた皆さんはその世界観にすっかり感情移入されているようでした。

例えば、記憶を失った主人公が水を求めて冒険する物語を構築し、失われた記憶の断片を集めながら、世界を救うための水源を探す壮大なクエストを描いたグループや、輝く黄金都市を舞台に、古代文明からインスパイヤされた遺跡と未来的な技術が融合した独特の世界観を舞台に、失われた宝物をめぐる冒険などが語られました。

どのグループの発表も、短時間で練り上げたとは思えないほど世界観が緻密で魅力的なものばかりでした。発表を拝見しているだけで情景が鮮明に浮かび上がり、実際にプレイしてみたくなるような完成度の高さ。子どもたちの柔軟な発想と協力しながら作りあげたひとつの物語、参加者全員が感銘を受けた時間となりました。

小保田さんからは「皆さんの発表を聞いていると、本当にこのゲームで遊んでみたいと思える。素敵な世界が広がっていて嬉しく思いました。誰もがワクワクして、楽しそうだなと感じること。それがゲーム制作の原点です」との言葉もあり、プロのクリエイターからの温かい評価に子どもたちの目は一層輝きを増していました。

今回のワークショップを通じて、子どもたちはゲームクリエイターという職業への理解を深めるだけでなく、他者とコミュニケーションすることでアイデアを収集し、創造を具現化していく喜び、チームで協力しながら作りあげることの楽しさを学ぶことができたようです。

次回の「くるさと」もどうぞお楽しみに!

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